対話型鑑賞はアートだけじゃない!?広がる新しい対話の形と企業での活用

対話型鑑賞 企業
対話型鑑賞はアートなどを楽しむ際に、周囲と対話を行うことで新たな発見や学びが生まれるという考え方です。近年学校や企業でも注目されている対話型鑑賞について、どのような方法で実施し、どのような効果をもたらすのかを考えていきましょう。

<目次>
対話型鑑賞とは
教育の場で活用される対話型鑑賞
ビジネスシーンで新しい学びの体験を生む対話型鑑賞
対話型鑑賞の可能性
まとめ

対話型鑑賞とは

対話型鑑賞みなさんは対話型鑑賞という言葉をご存知でしょうか。今回は近年学校や企業で教育方法の1つとして取り入れられはじめている対話型鑑賞について、説明していきたいと思います。

対話型鑑賞とは、1980年代半ばにアメリカのニューヨーク近代美術館(MoMA)で開発されたアートの鑑賞法です。英語ではVTS(Visual Thinking Strategies)と呼ばれ、当初は子供向けの鑑賞法としてアナウンスされていました。

アート鑑賞における対話型鑑賞の特徴は、美術の知識をもとにするのではなく、その場で抱いた感想や想像をベースに対話を行うところにあります。つまり、作品の背景や技法、作者の生涯といった情報を抜きに、作品に向き合うのです。

各参加者は絵を見て感じた思いをグループで共有し、その対話を通じて観賞を深めていきます。対話型鑑賞ではこのようなコミュニケーションによって、想像力や考える力、伝える力、話を聞く力を伸ばすことができるといわれています。

対話型鑑賞のやり方は?

対話型鑑賞はグループで実施します。具体的には10名以下の参加者に対して1名の学芸員がつき、司会役を務めます。この司会役の学芸員は「ファシリテーター」と呼ばれ、会の進行を行いつつ、参加者から自由な感想や発言を引き出していきます。

ファシリテーターの役目は一方的な説明ではなく、参加者同士の対話の促進です。参加者がお互いの感想を聞き、自分の考えに取り入れるサポートをしていきます。参加者はこのような時間を通じて、1人で鑑賞するより豊かな時間を過ごせるのです。

作品1点ずつをじっくり味わい、グループで共有する時間は、参加者にとって全く新しい体験となります。

このように、対話という参加者同士の交流に重点を置く対話型鑑賞は、アメリカでは100以上の美術館と300以上の学校で実施されているといわれています。日本では1998年頃から広まりを見せ、近年では学びの場でも活用されるようになりました。

教育の場で活用される対話型鑑賞

対話型鑑賞もともと子供向けの鑑賞法として生まれた対話型鑑賞は、学校教育とも親和性が高く、全国的に浸透し始めています。教育の場で対話型鑑賞が注目されたのは、一方的に教えるのではなく、答えのない問いかけを行うというアプローチでした。

対話型鑑賞を通じて、まず子供たちは普通の授業で勉強するような教科とは違い、自由な解釈を行う楽しさを知ります。そして、友達、あるいは普段あまり話したことのないクラスメイトから自分にはない視点やアイデアを受け取ることができるのです。

このような経験を通じて、子供たちは自分の感覚に気づき、相手の考えを尊重する気持ちをもてるようになります。

また、さらに一歩先を行く取り組みとして愛媛県では国語や社会といった美術以外の教科についても対話型鑑賞の考えを取り入れてきました。

愛媛県は対話型鑑賞を取り入れた授業を「対話型授業」と呼び、その取り組みは2018年に文化庁広報誌『ぶんかる』にも取り上げられたほどです。

愛媛県で学校教育に対話型鑑賞の導入を推進した、愛媛県美術館の専門学芸員 鈴木氏の取り組みは書籍『教えない授業――美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方』にまとめられ、2019年4月に出版されました。

ビジネスシーンで新しい学びの体験を生む対話型鑑賞

学校教育と同時に、近年対話型鑑賞が広まりを見せているのが、ビジネスの場です。

なぜビジネスの場で対話型鑑賞が有効なのか。たとえば、対話型美術鑑賞プログラム「ビジネスのためのアート・ワークショップ」を実施しているポーラ美術館は下記のように説明しています。

——対話型での美術鑑賞を通して、これからのビジネスシーンにおいて欠かすことのできない「感受性・洞察力を高め、本質を捉える力」「多様性を認識し、受容する力」 「多様な情報を分析・総合しながら考察し、隠れた要素やストーリーを引き出す力」「感じたことを言語化し、論理的に伝える力」等を育成します。例えば、企業研修(新人研修、役員研修など)、異業種交流会、ビジネスやアートにご興味をお持ちのグループの皆様にご参加いただけます。五感を活かしてアート鑑賞の新たな楽しみを発見し、感性や創造力を高めるための実践法を体験していただきます。

また、美術館以外の団体がビジネス向けに対話型鑑賞の場を提供している例もあります。具体例として、京都芸術大学 アート・コミュニケーション研究センターは対話型鑑賞を企業向けサービスとして提供しています。

同センターは2012年に対話型鑑賞を企業内の人材育成や組織開発の手法として応用する取り組みを開始しました。内容としては、ビジネスパーソン向け公開講座の開催や個別企業への人材育成・組織開発プログラム提供など。

目指すのは対話型鑑賞を美術鑑賞の方法としてのみ捉えるのではなく、あらゆる人材育成の基礎となるコミュニケーション能力向上の手法とすることだといいます。

対話型鑑賞の可能性

対話型鑑賞 可能性美術館ではじまった対話型鑑賞をですが、ここまで見てきたようにその可能性は様々な領域へと広がりを見せています。また、最近では「対話型鑑賞=アート」という題材にとらわれない事例もでてきます。

●音楽の対話型鑑賞

NPO法人芸術資源開発機構(ARDA)はクラシック音楽を豊かなイメージで聴き、語り合うことで音楽を楽しむ回路をつくる取り組みを行っています。

2015年・2016年に東京都港区とサントリーホールとともに実施した 「Enjoy!Musicプロジェクト」ではクラシック音楽を感じて、表現するプログラムを企画・運営しました。

流れとしてはドビュッシーの『海』を鑑賞し、思い描いたイメージを絵にする授業のあと、サントリーホールに移動し、生演奏を楽しむというもの。10名のファシリテーターが進行し、港区立小学校10校の4年生600人が参加しました。

今後対話型鑑賞の広がりが予想される媒体

対話型鑑賞の考え方は社会で認知され始めたばかりですが、これからは芸術分野以外の題材・媒体を活用したコンテンツが生まれてくることでしょう。

アクティ場ForTeamは社会での浸透に先んじて、企業に対して「対話型鑑賞」と楽しさをもたらす「遊び」の要素を取り入れたチームビルディングのコンテンツを、下記4つの領域で提供しています。

【ブックパーク】
bookpark
https://team.actiba.net/bookpark/

本を題材にチームで対話を行うことで、互いの理解を深め、価値観を広げる対話型鑑賞を提供しています。「社内読書会」、「読書しない読書会」という2種類のコンテンツを通じてチーム向け対話型鑑賞を体験していただけます。

【カメラパーク】

https://team.actiba.net/camerapark/

写真を撮る・見る・語りあうというプロセスを通じて、対話型鑑賞を体感してみませんか。カメラパークではマインドフルネスを高める「フィルムカメラ撮影会」と、OODA LOOPを実践する「写真鑑賞会」を用意しています。

【4コマパーク】

https://team.actiba.net/4komapark/

4コマパークのプログラムに参加すれば、ストーリーを作ること、話すこと、そして聞くことも、対話型鑑賞の1種だと実感できるはずです。「4コマワークショップ」と「4コマ落語」で、仲間とともにフロー状態を味わえる対話型鑑賞を体験してみませんか。

【シネマパーク】

https://team.actiba.net/cinemapark/

映画を見た後、だれかに感想を話したくなったという経験は、だれもがしたことがあるものだと思います。映画は対話型鑑賞に最適なのです。「映画鑑賞ダイアログ」と「名作映画祭」では映画による対話型鑑賞体験を提供しています。

※読書を題材にした対話型鑑賞コンテンツと、4コマを題材にした対話型鑑賞コンテンツはオンラインでも提供しています。
・【オンライン】チームビルディングにブックダイアログ研修
https://team.actiba.net/onlinepark/book-dialogue/
・【オンライン】4コマプレゼンテーション研修
https://team.actiba.net/onlinepark/4komaprezen/

まとめ

美術館で生まれ、学校教育やビジネスシーンでも活用されている対話型鑑賞。今後はアートという枠にとらわれることのない広まりを見せていくことでしょう。

アクティ場ForTeamでは本・カメラ・ストーリー・映画という4種の対話型鑑賞コンテンツを充実させていくとともに、新たな媒体への展開も見据えています。チームビルディングにつながる対話型鑑賞を行いたいという方はぜひお問い合わせください。

 

<画像出典・参考一覧>
・足利市立美術館「対話型鑑賞について」
http://www.watv.ne.jp/~ashi-bi/2015VTS.html
・リクナビNEXTジャーナル「必要なのは、自由な発想だけ!MoMA開発「対話型アート観賞」で磨ける、ビジネスに役立つスキルとは?」
https://next.rikunabi.com/journal/20181030_d01/
・NPO法人芸術資源開発機構(ARDA)「対話で美術鑑賞「アーツ×ダイアローグ®︎」」
http://www.arda.jp/dialogue/elementery_school_new
・NPO法人芸術資源開発機構(ARDA)「対話で音楽鑑賞」
http://www.arda.jp/dialogue/music
・文化庁広報誌ぶんかる「「教える」から「引き出す」へ―えひめ「対話型授業」プロジェクト―」
https://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/museum/museum_044.html
・鈴木有紀(2019)『教えない授業――美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方』 英治出版
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4862762654
・ポーラ美術館「対話型美術鑑賞プログラム「ビジネスのためのアート・ワークショップ」」
https://www.polamuseum.or.jp/exhibition/event/2018/aws01/
・京都芸術大学 アート・コミュニケーション研究センター「ACOP」
https://www.acop.jp/