【チームの未来】「チーム・個人に新たなメンバーとの出会いをもたらす場所が必要になる」。広島県尾道市にあるシェアオフィス「ONOMICHI SHARE」事業責任者 後藤氏インタビュー

シェアオフィス「ONOMICHI SHARE」
これからのチームや働き方のあり方を、様々なフィールドで活躍しているビジネスリーダーに問うインタビューシリーズ「チームの未来」。第6弾はシェアオフィス「ONOMICHI SHARE」事業責任者の後藤 峻氏に話をうかがいました。

ONOMICHI SHAREは広島県尾道市にある瀬戸内海に面したシェアオフィス。海に臨む仕事の場として、遊びの出発点として、多くのユーザーに利用されています。

また、ONOMICHI SHAREは個人・チームのコラボレーションが生まれる拠点として働き手と企業、そして地域を繋げる存在です。今回は事業責任者である後藤氏に、これからシェアオフィスが担うべき役割とチームに必要なものについて語っていただきました。

  1. 企業・個人・チームが利用する尾道のシェアオフィス
  2. シェアオフィスはユーザーや地域の期待に応えるハブになれる
  3. 個人と個人のかけ合わせによってチームができていく
  4. チームが使い、チームが生まれるONOMICHI SHARE
  5. ユーザーに仕事場としての快適さと、旅先で出会うセレンディピティを
  6. まとめ

<プロフィール>
ONOMICHI SHARE 事業責任者/コンシェルジュ
後藤 峻(ごとう たかし)氏

後藤 峻
尾道のシェアオフィス、ONOMICHI SHAREの事業責任者兼コンシェルジュ。利用者にとって快適に業務ができることをベースに空間づくりをするとともに、「利用者がどんな目的で尾道に滞在しているか」に意識をもちながら、地域内外の人や事業を繋ぐことでそれが前進するよう、きっかけをつくるハブとなることが自身の役割と捉えて立ち回る。2016年に京都から移住。

■note
https://note.com/taquos
■「ONOMICHI SHARE」公式サイト
http://www.onomichi-share.com/

企業・個人・チームが利用する尾道のシェアオフィス

三田
現在の取り組みについて教えてください。

ONOMICHI SHAREは株式会社ディスカバーリンクせとうちが運営するシェアオフィスで、広島県尾道市の海沿いにあります。

もともと尾道市の書庫だったスペースをリニューアルし、オープンしたのが2015年1月。市の事業者募集の公募に弊社が応募し、改装から運営まで引き受けて今年で6年目を迎えています。

私は2016年2月から事業責任者として、ONOMICHI SHAREの運営に携わっています。

ONOMICHI SHAREは当初、外部企業を尾道市内に誘致するためのサテライトオフィスとしてスタートしました。現在は企業にとどまらず、個人事業主やフリーランサーといった個人の働き手や、尾道で活動するプロジェクトチームにも利用していただいています。

また、ユーザーの半数以上は移住者の方です。外部の人材が集まる場になったことで、個人のクリエイターと地域のプロジェクトや企業とのコラボレーションも生まれています。

シェアオフィス チーム

オープンしてからわかったことなのですが、移住してくる方のうち、尾道で法人登記をする人は多くありませんでした。ほとんどの方があくまで暮らしのための移住で、尾道にやってきていました。ただこの2年ほどで、移住して暮らし+何かを尾道でしたい、という方や法人、プロジェクトチームが増えています。

そうした背景に合わせる形で、ONOMICHI SHAREではシェアオフィスのユーザーを企業に絞る必要はないという考えに変わってきました。むしろ現在は、個人・企業問わずいろんな人が集まり、交流できる場所であれば良いと思います。

新型コロナウィルスの影響で伸び悩んだ利用も、5月以降回復の兆しをみせています。地域を旅するノマドワーカーに立ち寄ってもらうこともありますし、今後もいろいろ人を受け入れていきたいです。

地域にとってのONOMICHI SHARE

シェアオフィス コラボ

ONOMICHI SHAREというシェアオフィスは、大きな軸としてユーザーのコラボレーションを目指しています。そしてこの点は、さきほどもお話した通り、個人・地域プロジェクト・企業の間で、いくつか事例も生まれています。

もう1つ、ある意味サブ的な目的なのですが、ONOMICHI SHAREとそこに集まるユーザーに、尾道というエリアで機能する貴重なリソースになってほしいと考えています。これはどういうことかというと、たとえばONOMICHI SHAREのユーザーには、尾道にはない視点や手段を持った人がいます。

具体的には、Facebookでライブ配信している人やオンラインでなにかを企画している人がいますが、こういった方は尾道では多数派ではありません。他にもデザイナーとして東京などの都会の視点を持ち合わせたデザインができる人も、1つのリソースになります。尾道ではテキストをベタ打ちしたWebページを持つ企業が少なくなく、WordPressを使えることがレアリティになるのです。

また、ユーザーができることだけでなく、ONOMICHI SHARE自体の空間も尾道というエリアで独自性があるものです。地方では、会議室はあっても都市部で働く人が標準的に求めるハードや技術、デザイン、センスが追い付いていないということが少なくありません。

シェアオフィス 会議

電源があっても、Wi-Fiが繋がっていないということもあります。ONOMICHI SHAREはそのような設備が充実しているとともに、カフェカウンターやテラスも備えるシェアオフィスです。ワークスペースや会議室だけでない空間は、多くのユーザーに選ばれる一因になっていると思います。

シェアオフィス カフェ

こうした背景から、ONOMICHI SHAREは地域を牽引する存在でありたいと考えています。先日は尾道地域の企業合同説明会をオンライン化するプロジェクトで、「Remo」というオンライン会議システムの導入支援を行いました。

このような取り組みは、IT化が万全とはいえない地元企業だけでは苦戦しがちです。地域で活動するシェアオフィスとして、ONOMICHI SHAREは今後もそういった地域に対するサポートを積極的に担っていきたいですね。

シェアオフィスはユーザーや地域の期待に応えるハブになれる

三田
テレワークが定着する未来をみすえて、シェアオフィスがこれからはたす機能はどのようなものだと思いますか。また、尾道という場所をどのように捉えていますか。

新型コロナウィルスの影響でテレワークは急速に浸透しはじめましたが、シェアオフィスの利用に直結するには段階があるのでまだ少し時間がかかるように考えています。

今回のテレワーク推進は「家から出ないように」、あるいは「自宅で仕事をしてください」というメッセージによるものです。そのため、新型コロナウィルスが収束しても、働き手の意識にシェアオフィスという選択肢は入ってきません。

テレワーク実施と新型コロナウィルス収束の間に、何らかの理由でシェアオフィスを使ってみる機会と、「よかったので使い続ける」という実感がなければならないと思います。今後シェアオフィスが仕事場として働き手に選ばれるには、何か新しい刺激が必要でしょう。

シェアオフィスを利用するきっかけはどんなことでも良いと思います。「テレワークをやってみたけど、家では集中できない」、「外の刺激がほしい」、「気分を変えたい」といった理由で使い始めた人が、ONOMICHI SHAREにも数多くいます。

カフェで仕事をするようになった人と、同じだと思いますね。はじまりはそういう気持ちでいいのです。むしろ、ユーザーがはじめて利用した時に、ONOMICHI SHAREがどのような価値を提供できるかが重要だと考えています。

また、尾道という場所に目を向けると、ここは新しいことを生み出したがっている場所です。地域としても新しい取り組みを後押しし、期待しています。

尾道 しまなみ海道

たとえば、しまなみ海道がそうですよね。サイクリングという一つのコンテンツ醸成はできて、今の尾道はその次の展開を求めているように感じます。その際に、ONOMICHI SHAREのような、外部の多様な人が集まるシェアオフィスが、何らかの機能を果たせるのではないかと思います。

ここに集まる個人が持つスキルや経験、関係性、ナレッジなどをうまく組み合わせて、外側でなにかを起こせないかと考えるのです。シェアオフィスはハブとして、集まるリソースを活かし、地方の課題や期待をプロジェクト化・ビジネス化していく存在になれるのではないかと。私自身がそんな可能性を抱いています。

個人と個人のかけ合わせによってチームができていく

三田
「チーム」について、後藤さんはどのようなイメージをもっていますか?

プロジェクト型といえばいいのでしょうか。なにかに取り組んでいるときに、スキル・役割を持つ人が集まって、ゴールに向かっていくイメージですね。

あくまで一個人の考えですが、所属していればそれだけで1つのチームになるというチームワーク型の考えや、チームを作ること自体が目的になるというのは違うと思います。

だからか、ただ結束を強めるという意味で「チーム作り」という言葉をつかうのが好きではなくて……正直苦手ですね。プロジェクトを通じて「良いチームになっていく」ものだと思います。

また、なにかの目的があって、「そのプロジェクトチームにだれが加わると面白いのか」、「この人だったらこういうことになるかもしれない」と考えていくのが、チームで働くということではないでしょうか。

「この人だったらこういう視点を持っていて、あの人とかけ合わせるとこういうカラーになるのかな?」と考える。私はそんなふうにチームと個人を見ています。

以前一度、尾道での起業支援のマーケティングセミナーを三田さんにお手伝いしていただいたことがありましたよね。あの時、私は内容が決まっているものをお願いしたわけではなかったと思います。設計図の通りやってほしいというふうには考えていなかったからです。

マーケティングセミナー

ゴールは決まり切った目的ではなく、チームのメンバー個人が持っている要素が集まった先に見えてくるものだと考えています。決まったメニューにそって素材を用意するのではなく、素材の形を見て、1番おいしく食べられるメニューを選んで調理していく。私は「チーム」という言葉と、チームで働くということに対してそんなイメージを抱いています。

チームが生まれるとき、ファンクションベースの人探しではつまらない。面白いことが起こりそうな人を見つけて、人と人を繋ぐようにして、チームを作っていくほうが良いと私は思います。そして、ONOMICHI SHAREというシェアオフィスがそのための場になることを目指しています。

チームが使い、チームが生まれるONOMICHI SHARE

三田
シェアオフィスと聞くと個人での利用を先にイメージしますが、チームや組織での利用はどのような状況でしょうか?

おっしゃる通り、シェアオフィスは個人が快適に仕事をするという機能を持つ場所ですが、ONOMICHI SHAREはチームでの利用もあります。詳しくお話しすると、ONOMICHI SHAREを使うチームには2つのタイプがあります。

1つ目は、できあがったチームが利用する場合で、もう1つは個人がONOMICHI SHAREでユーザーとユーザーが出会い、チームになる場合です。

できあがったチームが使う際には、チームのメンバー全員がここを拠点にしていただくことがあります。あるいは、尾道市内のプロジェクトに関わるチームのメンバーが、入れ替わりながらここで作業するという使われ方をすることもあります。

尾道 海

また、ONOMICHI SHAREで個人が出会い、その場でつながってチーム化するケースでは、ユーザー同士で話が進む場合と、私が間に入る場合があります。コンシェルジュとしてユーザー同士を繋いでチームを作る役割に対して、私は「翻訳家」のイメージを抱いています。

というのも、ユーザー同士を繋ぐときには、「この案件・クライアントのニーズを考えたら、この人が合うだろうな」ということを考えるのですが、うまくマッチングするためにはユーザー個人を読み解く必要があります。

そのため、雑談で各ユーザーの雰囲気や性格、好き嫌い、癖などを把握しつつ、ポートフォリオや作品を見て、どのようなことができるかを見極めています。アウトプットをみれば、その人のレベル感やセンスがキャッチアップできますが、マッチングには相性も大切です。

たとえば、クライアントのAさんが求めるニーズを満たそうとするとき、「仕事のクオリティだけではなく、仕事のしかたやコミュニケーションの相性も必要になる。どんなマッチングをすれば、良いチームが生まれるか」と考えるのです。

ユーザーに仕事場としての快適さと、旅先で出会うセレンディピティを

三田
シェアオフィスをチームが使う価値は?

前提として、「働くための快適な環境を提供する」というものがあります。これはシェアオフィス全般にいえることだと思います。

一方でONOMICHI SHAREがより意識するのは「セレンディピティをどう起こしてあげられるか」ということです。これはシェアオフィスを運営する担当者次第で提供されるオプション的な要素になるかもしれません。

私はONOMICHI SHAREを偶発性のある場所にしたいと考えています。テレワークでもワーケーションでも、訪れたユーザーに提供されるのは用意されたものだけではありません。旅先でなにかに出会う体験のような、偶然の時間が生まれる場所にしたいのです。

それが、個人がONOMICHI SHAREというシェアオフィスを使う付加価値になると思いますし、その偶然を必然にしていくことが私の役割だと考えています。仕事はオンラインで探せるようになりましたが、リアルで人が繋がる場所はこの先も必要とされるはずです。

また、チームにとっては、チームで使うからこそ、チーム以外の人と出会える場になります。チームにも個人にも、新たな出会いをもたらす場所がこれから改めて必要になるでしょう。それがシェアオフィスであり、ONOMICHI SHAREであればいいなと思います。

そして、そのニーズに応え、確率を上げる手助けをするコンシェルジュの仕事は、想像力のような、ある意味アーティスト的なナルシズムがないとできないことだと感じます。

一方で、シェアオフィスに偶発性を求めているわけではなく、目的を効率的に進めたいというチームもあるでしょう。そういったチームにとってONOMICHI SHAREは、働く人目線の設備が整い、快適に働ける場です。

それぞれに異なるユーザーのニーズを読み解き、必要に応じてユーザー同士を繋げていく。それが「翻訳家」としての私の役割であり、これから地方で働く人やチームにとって求められていることなのではないかなと考えています。

尾道 猫
尾道 町並み

今のONOMICHI SHAREは都市部の人からすれば心地良い場所であり、地方の人からすれば新しい場所だと映っているはずです。地方には新しく、エリアの発展や人の交流を牽引する
存在が必要だと思います。ONOMICHI SHAREはその役割を担っていきたいのです。

改めてこの半年を振り返ると、テレワークが普及し、都心に人が集中して働くということが当たり前ではなくなりました。今後、住む場所についても都市部である必要はなくなり、地方への移住が増えると思います。

そうなると、地方で働くことを決めた人には、その土地で人と出会い、チームになっていく場所が必要になるはずです。また、地方で事業を行いたいと考える企業や個人にとっても、人との出会いや事業を成長させていくためのつながりを構築する場が必要になるでしょう。

ONOMICHI SHAREが担っていきたいのは、その場や機会を提供する役割です。エリアの発展や人の交流を牽引する場所として、働く人を通じて地域に欠かせない存在になりたいと考えています。

きっと尾道以外のエリアでもONOMICHI SHAREのような場は増えてくるのではないでしょうか。私たちがこうした役割を目指す過程で、他のエリアからも参考にしてもらえるようなシェアオフィスになれれば嬉しいですね。

まとめ

「チームの未来」インタビュー第6回目は、ONOMICHI SHARE 事業責任者の後藤氏に話をうかがいました。これまで「チームの未来」ではチームを内側から作ってきた方々へのインタビューを実施してきました。一方で、今回はチームが生まれる場を見守る、あるいはコーディネートする立場から興味深い話を聞くことができました。

シェアオフィスが個人のためだけでなく、チームに対しても価値を提供し、その場で新たなチームが誕生することもあると語る後藤氏。自宅ではない場所で働く独自の可能性を示すONOMICHI SHAREでは、これからも新たな繋がりが生まれていくことでしょう。

執筆者・編集者紹介

執筆

正社員+業務委託で4社と契約を結ぶパラレルワーカー。様々なチームに所属し、1つの会社に依存しない働き方を体現しています。ライターとして800本以上の記事制作実績があり、得意分野は組織、キャリア、働き方関連。

編集

様々なバックグラウンドがある個人が尊重され続けるチーム作りを目指して、「対話」と真剣に「楽しく遊ぶ」ことをデザインしたチームづくりのためのプログラム「アクティ場 For Team」を提供しています。

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