【チームの未来】「ひとりひとりがチームを持って、自分事の範囲を広げてほしい」。設立から5年半で上場を果たしたアディッシュ社、その成長を支える管理本部のチーム論とは。取締役 杉之原氏インタビュー

アディッシュ株式会社 杉之原 明子

これからのチームや働き方のあり方を、様々なフィールドで活躍しているビジネスリーダーに問うインタビューシリーズ「チームの未来」。第8弾はアディッシュ株式会社 取締役 杉之原 明子氏に話をうかがいました。

アディッシュ株式会社は企業・学校向けに、インターネットモニタリングやカスタマーサポートなどのサービスを提供しています。情報社会で多様化するコミュニケーションを、よろこびをもって「つながる」手段にすることを目指して事業を展開しています。

今回は同社取締役の杉之原氏に、これからのチームについて語っていただきました。

  1. 企業・学校・社会のために、人の手がかかる部分を効率化していく
  2. チームを持つことで、自分事の範囲を広げていける
  3. 「女性」や「ジェンダー」に関わる問題を問いかける存在に
  4. オンライン化は個人に気づきのポイントを増やしてくれる
  5. オンライン・対面に関わらず、ひとりひとりがチームを持つように
  6. まとめ

<プロフィール>
アディッシュ株式会社
取締役 組織戦略室管掌
杉之原 明子

2008年に株式会社ガイアックス入社後、学校非公式サイト対策のスクールガーディアン事業の立ち上げ及び責任者を経て、2014年、アディッシュ株式会社取締役に就任。管理本部の立ち上げ及び上場準備の旗振りを行った。2020年3月に東証マザーズ上場。早稲田大学教育学部卒。

企業・学校・社会のために、人の手がかかる部分を効率化していく

三田
現在の取り組みについて教えてください。

アディッシュの事業は、2007年に株式会社ガイアックスの一部門としてコミュニティサイトのインターネットモニタリングサービスを提供開始したことから始まりました。

その後、事業が成長したことで2014年10月にガイアックスから分社化し、アディッシュ株式会社を設立しました。

私たちは「つながりを常によろこびに」というミッションを掲げ、インターネット上で人と人がつながるからこそ生まれる課題を解決したいという思いで事業を展開しています。

サービスについてお話しさせていただくと、アディッシュのサービス展開には縦軸と横軸があります。

まず縦の軸はサービスの「メニュー」です。現在は、ひとつの企業に対して、モニタリングサービスやソーシャルアプリサポート、SNS運用代行、記事審査などの複数のサービスを提供することでお役に立てる幅を増やしています。今では東京、仙台、福岡、札幌、フィリピンに拠点があり、メンバーはグループ全体で700名。そのうち、約500名が毎日モニタリングやカスタマーサポートの対応をしています。

この軸では、「効率化できそうだけど、人の手がかかる」という観点で、役に立てるポイントを増やしていくことを考えています。

次に横の軸は「領域」です。最近では、SNS→ソーシャルゲーム→シェアリングエコノミー・Fintech領域→MaaSという形で、注力する領域を広げています。

MaaSとは”Mobility as a Service”の略で、マイカー以外のすべての交通手段を1つのサービスとしてとらえ、人の移動をシームレスにつなぐ考え方です。日本なら電車、バス、タクシー、シェアバイクなどの交通手段を一度にまとめて検索できるというようなイメージです。

日本では、地方で効果を発揮することが予想される一方で、カスタマーサポート運用時にはリアルタイム性が求められ、しかも各エリアの交通情報にまつわる知識が必要ということで、現在はサービス運営会社様と協力し、新しいカスタマーサポートの形を作っている最中です。

今は新しいサービスとしてMaaSに着目していますが、シェアリングエコノミーやフィンテック領域にみるように、「より多くの人が一気に使うことで価値が生まれる領域」は常に注目しています。

三田
杉之原さん自身はどのような役割を担ってきたのでしょうか。

アディッシュを設立するにあたり、管理本部をゼロから作りながら、同時に上場準備をすることが私のミッションでした。

しかし、私自身は営業出身の人間で、管理のことはわかりませんでした。そこで経験豊富な財務出身のメンバーにチームに加わってもらったり、管理部門の業務すべてを経験してきたメンバーに参画してもらったりと、いろんな方の力を借りながら取り組む日々でした。

そんなゼロから始まった管理本部も、今では15名が所属するチームになりました。メンバーの年代は20代から60代まで様々で、それぞれが専門領域を持つプロフェッショナル集団です。事業の成長を支えながら、それぞれの職能を追求しています。

チームを持つことで、自分事の範囲を広げていける

三田
「チーム」という存在をどのように見ていますか?

管理本部の立ち上げは、私含め3名で始まりました。私以外はそれぞれに家庭を持っているという構成だったため、長い時間働いてなんとかしようという考えが通用しないチームでした。

でも、これがよかったと思います。時間がない中でもいかに成果を出すかを考えなければならなくなったからです。私は「長時間労働ではないやり方で、チームの力を最大化するためにどうすればいいか」というマインドセットになっていきました。

その答えの1つとして、メンバーが既存業務をだれかに頼む手段となるオンラインアシスタントサービス「helpyou」の活用を決めました。

これには業務負担を軽減するという目的に加えて、「すべて自分でやらないといけない」という意識が、「これは人に頼めるのではないか」という意識に変わってほしいという思いがあったからです。

結果として、各メンバーは、オンラインアシスタントサービスや社内の他ームをうまく活用しながら、仕事ができるようになっていきました。たとえば、アルバイト面接への応募者へのリマインド電話のような、ひとりでやると膨大な時間がかかるタスクは、社内にあるコールチームの力を借りました。

各メンバーが業務を見直し、時間を生み出し、未来を作る仕事に取り組んでいかなければ、上場準備なんてできないという状況だったと思います。

また、メンバーそれぞれがチームを持つという感覚をもつことで、ある意味で逃げ場になる場所・頼れる場所ができるのではという意図もありました。メンバーたちにはそのような場所を持っていてほしいという願いがあったのです。

三田
それぞれのメンバーがチームを持つことで、なにか変化はありましたか。

それぞれが社内外のチームを活用してきたことを振り返って思うのは「個が強調される時代になっていくなか、チームを持つ経験をすることが大事」だということです。

ひとりひとりが個々に仕事をしていたときには、メンバーは「自分でする以外」の選択肢があることに気づいていませんでした。知らず知らずのうちに、視野が狭くなっていたのです。チームを持つことで、閉ざされた視界が開けたと思います。

私自身も過去には「リーダーとして」ということを考え、「リーダーシップはリーダーが持つもの」だと思っていました。しかし、事業を成長させていくなかで「リーダーシップは全員がそれぞれ発揮できるもの」だと思えるようになりました。

たとえば、あるメンバーは20%、あるメンバーは70%という形でそれぞれがリーダーシップを発揮しているとします。そうやって、チームとしてのリーダーシップの総量が100%を超えて200%にもなるというのが良い状態だと思えるようになりました。
ひとりのリーダーが100%のリーダーシップを発揮することが必ずしも正しいことではなかったんだということに気づいたのです。

私と同じように、各メンバーもチームを持つことで気づきを得たのではないかと思います。

三田
ちなみに、チームをどのように定義していますか。また、チームで活動するうえで大切にしていることはありますか。

まず定義ですが、2名以上で共同作業しているものはすべてチームだと思います。

大切にしていることとしては、小さなコミュニケーションを交わすことを重要視しています。結果として、現在は、とてもフランクに話せるチームができていると思います。

具体的な取り組みとしては、毎朝9時40分から10分間、雑談の時間を設けています。やっていることは、個々人が「今日は子どもを迎えに行く日です」といった状況を共有したり、気になったニュースをシェアして、そこからメンバーで話を膨らませていくというようなものです。

管理本部の仕事は、それぞれがプロフェッショナルだからこそ、周囲とコミュニケーションをとらなくてもできてしまう一面があります。一方で、上場に向けて膨大なタスクがあるなかで部署問わず話ができる関係になることには意味があり、そのために雑談の時間は必要だと考えています。

仕事以外の話ができること、プライベートの話ができて繋がりが生まれていくことは、チームのバネになると思っています。

現在は、リモートワークの推進によってコミュニケーションの場がオンラインに移行したので、Slack内の雑談アプリ「Colla」を使ってコミュニケーションをとっています。「あなたのお国自慢は?」というような質問が自動的流れてきて、後日メンバーたちの回答がまとめられて全員のもとに届くというものです。

それでも、オフラインのときのように「ちょっと疲れた顔をしているね」、「お腹すいたね」といった、その場の雰囲気から生まれるようなやりとりができなくなっているのは課題だと感じています。

「女性」や「ジェンダー」に関わる問題を問いかける存在に

三田
チームというテーマに関連する話かわからないのですが、noteで「2020年、女性というキーワードにトライする」という情報発信を拝見しました。詳しくお聞かせいただけますか?

実は私にとって「女性」、あるいは「ジェンダー」という言葉に向き合うのは今回が2回目なんです。

1回目は2015年にガイアックスグループの経営会議に入ったときでした。そこで私だれにもなにも言われていないのに、女性の代表として見られたら困るなあと、女性ひとりという状況を自分で勝手に意識してしまったのです。

こうした体験から「女性」ということを考えるようになり、2016年に働く女性の姿にフォーカスしたWebメディアをリリースしました。働き方や生き方を女性社員が自らつくる姿と、カルチャーを映し出そうとしました。

しかし、このメディアはうまくいかず、スタートから2年でクローズすることになります。

それから、現在アディッシュの役員は11名ですが、女性は私1名だけです。設立時は6名分の1名だった女性役員の比率が、会社の成長によって11名分の1名になったのです。

役員に女性がいるからといって、ひとりでに経営層の女性候補者が増えるわけではないと、身を持って痛感しました。こうした出来事を経て、何も考えずに流れに身を任せていてはいけないと改めて思うようになりました。

ただ、女性リーダーが少ないからと言って、単純に増やすことが正しいと思っているわけではありません。

「会社」という組織のなかでみれば、女性リーダーを増やす増やさないという方針を決めるのはあくまで経営者の判断です。私は女性リーダーが少ないという問題の答えを説くのではなく、問題自体を問いかける存在になりたいと考えています。

それが今の私にとって「女性」あるいは「ジェンダー」という言葉に向き合うということです。

三田
それはチーム作りという観点でも考えるべきことかもしれませんね。

そうですね、チームである限り向き合う必要のある問いだと思います。

社会には「2030年までの早い段階で指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%」にという目標がありますが、アディッシュでも、具体的に数値目標を定め、そのうえで人材育成をしていく必要があると考えています。

放っておくと男性が増えていく傾向があるということを身をもって知り、将来、指導的地位を担ってほしい後継者の男女比が少なくとも半々、あるいは女性6:男性4になっていないといけないかもしれません。その結果、30%に着地すればいいなというイメージで、構造と指標の両輪で目標の実現に向けて進めていきたいと考えています。

「女性というキーワードにトライする」という意思表明や女性活躍の支援についての話は、これからの挑戦としてnoteにまとめていますので、もし良ければご覧ください。

合わせて読む:Akiko Suginohara

オンライン化は個人に気づきのポイントを増やしてくれる

三田
オンライン化・デジタル化の流れが個人と会社に与える影響についてどうお考えですか?

会社だけに所属している個人にとって、やはり会社から受ける力学は強いものです。多くの場合、個人より会社の目標・目的が優先されます。そのような中、個人が社内でも社外でも、趣味のチームでも、複数のチームに所属すれば、別の視点や気づきを得ることができます。

たとえば、社外のチームに所属することで、会社での役割が活きていることに気づけるかもしれません。また、会社でのこと・趣味でのことを融合して「これが自分がやりたいことなのかな?」と思うきっかけになる場合もあるでしょう。

オンライン化によってそのような機会を持ちやすくなったと思います。会社に所属しているだけよりも、気づきのポイントが増えると感じます。

社会では「やりたいことを自ら考える」、「個が自立していく時代」という考えが前提になりつつありますが、実際のところは簡単なことではありません。

たとえば、いきなり、メンバーに「あなたが人生でやりたいことはなんですか?」とか、はたまた、「管理職になりたいですか?」と問いかけても、会話はなかなか進まない感覚があります。メンバーそれぞれがオーナーシップを持てるようにして、いろいろな活動を通じて気づきを得られるようにすることで、意識が芽生え、やりたいことがはっきりしていくものではないでしょうか。

点と点がつながるように、「結果的にいつの間にか意識するようになっていた」という温度感が、日本人には合っているのではないでしょうか。

加えて、個人になにかを促すとき、会社が主語になると、うまくいかなくなると感じます。チーム単位ならマインドを伝えてアクションを促すことができますが、会社単位になるとそうもいきません。

従業員700名全員に浸透することを考えると、制度化しようとするでしょう。制度化すると、制度を運用するために、たとえば、数十人のチームリーダーと協力する必要があります。特にこういったテーマにおいては、その人は別のマインド・別の価値観を持っているかもしれません。

このように考えていくと、主語が会社になると、個人になにかを促すイメージがもてなくなります。だからこそ会社にすすめられたからという理由では個人は動かないでしょうし、個人は自分で会社の外に出ていって気づきを得る機会を持ったほうがいいと思います。

オンライン・対面に関わらず、ひとりひとりがチームを持つように

三田
チームの未来はどのようになっていくと思いますか?

オンライン化によって個人は本業以外のチームに所属しやすくなりました。その先で生まれる新しい可能性が、個人のポートフォリオを思ってもみないものにしていくと思います。

これから個人は複数のチームに所属して、それらが相互に関係していくことが予想されます。家庭も1つです。家庭や社外のなにかしらのチームで得たことが本業にフィードバックされ、その逆も起こっていくようなイメージです。

複数のチームでの活動が個人に新しい可能性を与えて、個人を強くしていくと思います。

また、自分がチームを持ったなら、選択肢が広がっていきます。リソースが広がって、新しい選択肢に気づき、仕事の仕方が変わって、働き方が変わる。人生が変わる。私はそういう経験をしたと思っているので、そういうことを体感する人がひとりでも増えてほしいですね。

オンラインによって外の人と会うハードルは下がりました。これまでのように会社に行って1日が終わるという生活は、個人がいろいろなチームに所属することで変わっていくでしょう。

これから、チームという言葉は、会社のなかの関係だけを指す言葉ではなくなると思います。そのような未来で、ひとりひとりがオンライン・対面関わらず、自らの可能性を広げるためにもチームを持つようになってほしいと思います。

まとめ

「チームの未来」インタビュー第8回目は、アディッシュ株式会社 取締役 杉之原氏に話をうかがいました。

「ひとりひとりがチームを持つことが、個人に新しい可能性をもたらす」というチームに対する考えは、組織を管理する立場にとっても働く個人にとっても、気づきのあるものではないでしょうか。

杉之原氏が言うように、オンライン化によって、チームと個人の関係性はこれからますます変わっていくことが予想されます。チームと個人が相互に作用していく関係を複数持つことができれば、私たちの仕事と暮らしはより自由で気づきのあるものになるでしょう。

執筆者・編集者紹介

執筆

正社員+業務委託で4社と契約を結ぶパラレルワーカー。様々なチームに所属し、1つの会社に依存しない働き方を体現しています。ライターとして800本以上の記事制作実績があり、得意分野は組織、キャリア、働き方関連。

編集

様々なバックグラウンドがある個人が尊重され続けるチーム作りを目指して、「対話」と真剣に「楽しく遊ぶ」ことをデザインしたチームづくりのためのプログラム「アクティ場 For Team」を提供しています。

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