【チームの未来】「チームに大切なのは美学があること」。7拠点、リモートが当たり前のオーストラリア留学センター社が描くチームの在り方とは。代表 衛藤氏インタビュー

チーム 美学
これからのチームや働き方のあり方を、様々なフィールドで活躍しているビジネスリーダーに問うインタビューシリーズ「チームの未来」。第5弾はオーストラリア留学センター 代表取締役の衛藤 伸彦氏に話をうかがいました。

オーストラリア留学センターはオーストラリアに特化した留学関連事業を運営し、オーストラリア6都市と日本1都市でサービスを提供しています。

サービス内容としては、語学学校・専門学校・大学・大学院留学のカウンセリングやお申込み手続き代行、現地生活サポートを無料提供。また、ホームステイや空港送迎の手配、進学・ワーキングホリデー・就職を希望する方向けのセミナーの開催、教育機関サポートなどを幅広く手がけています。

業界最多のQEAC(オーストラリア政府認定留学代理店カウンセラー)が所属し、常にお客様第一の姿勢で様々な留学関連業務に対応している同社。今回は代表である衛藤氏に、これからのチームについて語っていただきました。

  1. 年間約1500名が利用する留学サービス
  2. 階層をなくすことでチームは生まれ変わる
  3. オンライン化で軽減したマインドセットや抵抗感
  4. 階層が少ない、フラットで家族的なチームが日本には合っている
  5. まとめ

<プロフィール>
オーストラリア留学センター 代表取締役
衛藤 伸彦氏
衛藤 伸彦
クイーンズランド州サンシャインコースト在住。1985年 千葉大学文学部行動科学科を卒業。文具メーカーのプラス(株)にて業態開発、商品開発、経営戦略室を担当。1990年 マサチューセッツ州立大学ビジネススクールに留学。1992年(株)ベネッセコーポレーションに入社。映像ビジネスや科学館の業務委託などの新規事業担当後、2004年より語学学校のベルリッツインターナショナルに出向。東南アジアのマネージャーやアジア地区のフランチャイズ管理を担当。2008年より現職に就任。入学手続き無料、オーストラリアの現地6支店での無料サポート、情報量豊富なWEBサイトの構築など、留学を志す全ての人々にとって「留学エージェントとはこうあるべき」という姿を追求する日々。
etonobuhiko.comにて個人ブログ更新中。

年間約1,500名が利用する留学サービス

三田
現在の取り組みについて教えてください。

オーストラリア留学センターという留学会社を経営しています。日本からオーストラリアの大学に進学を希望する高校生の出願の手伝いや、語学留学を希望する20代の方々の申し込みサポートなどを無料で行っています。

オーストラリア留学センター
<出典>オーストラリア留学センター(https://www.gcsgp.com/

運営費用は全て、オーストラリアの大学や語学学校からいただく仕組みです。毎年、約1500名が私たちのサービスを利用し、オーストラリアで学びの機会を得ています。

また、留学生のホームステイ先の手配や滞在中のケアといった各種サポートも幅広く提供してきました。所属するコーディネーターは全員がお客様第一主義にこだわって、仕事に取り組んでいます。

私たちが目指すのは、1人の若者にとってオーストラリア留学が「幸せ」を創り出すきっかけになることです。「オーストラリアに留学することが若者の人生にどんな意義があるのか」という問いを持ち、留学生たちと接しています。

多民族国家として成功しているオーストラリアの社会は、世界でも珍しいものです。そこでの日々は、しっかりとした決意と準備をしてきた留学生にとって、日本ではあまり考えることのなかった「幸せ」のイメージを創る素晴らしい機会になるはずです。

オーストラリアへの留学が、「学位を取る」、「英語を学ぶ」、「金銭的な成功を得る」といった目的に終始するのではなく、1人1人が自分らしい人生を歩み、幸せを掴むきっかけとなることを私たちは心から望んでいます。

私自身はオーストラリアの東海岸、クイーンズランド州のサンシャインコーストという場所に住んで、家から仕事をしています。

会社のオフィスは、シドニー、メルボルン、ブリスベン、パース、アデレード、ゴールドコーストという留学生が渡航する地域と、東京の合計7か所にあります。各地で働くスタッフの数は、合計20名です。

このような組織なので、リモートコミュニケーションは当たり前、全員が集まるのは年に一度の全社会議の時だけというユニークなチームです。

階層をなくすことでチームは生まれ変わる

三田
「チーム」という存在の現状とこれからをどのように見ていますか?

私が抱くチームのイメージは3つの要素で構成されています。

まず1つ目は、20名~30名という「サイズ感」です。もっというと、20名以下はあるけど、30名以上はない。それ以上の人数になると、チームとしてのパワーや統一感をマネージしていくのが難しいと思います。

たとえば、学校の1クラスの人数や団体スポーツチームのベンチ入りメンバーの人数もこのくらいではないでしょうか。サッカーでも野球でも、レギュラー+サブで25名くらいになってきます。それはチームとして統一感が持てるサイズだからでしょう。

もし人数が30名以上になるなら、チームを分けていく必要があります。システム開発でも、メーカーの試作品開発でも、おそらく今はほとんどすべてのプロジェクトが20名~30名で完結する時代です。

2つ目の要素は「同じ目的に向かって活動している」ということです。メンバーの中に違う方向性がないこと、1つの目標に向かって進んでいる人たちが集まっている状態。そのような集団をチームと呼ぶのだと思います。

そして3つ目、最後の要素は「外から妨害がないこと」です。たとえば、日本の多くの企業に属するチームは、組織内でチームより上の存在から口出しされることがあります。なかなかチームの意思で好きにはできません。

しかし、本来チームは外からの妨害がない状態にあるべきです。チームの中で完結できること、邪魔をする人がいないこと、外からの意見に活動を左右されないこと。そういう環境がチームには必要なのです。

目標を管理しないチーム作り

三田
たしかに外から妨害されてしまうチームでは、どれだけチーム内で良い関係を作れても機能しにくくなってしまいますね。衛藤さんのチーム(会社)では、どのようなチーム作りを心がけているのでしょうか?

チームを作る際、目標つまりは数字にとらわれると、うまく回らなくなると考えています。私たちの会社は目標オリエンテッドではなく、むしろ目標を管理しない組織を目指してきました。

具体的な方法としてはマネージャーという目標を管理するポジションをなくし、全員が売上を持つ形をとりました。全員をフラットにし、階層をなくしたのです。

全員が数字を持つことで、売上目標は普通にがんばれば達成できるものとなり、結果として目標について話す必要がなくなりました。はじめ、マネージャーだったメンバーからは「なぜまたメンバーに戻るのか」という声もありました。

しかし、マネージャーの役割を担っていたメンバーは、もともと「売れる人」だったのでマネージャーの役割を担っていたのです。フラットなチームでメンバーに戻ってすぐに無理なく目標を達成でき、個人の成績も会社の業績も上がり、全員の処遇も引き上げることができました。

自分のことだけを考えて仕事をし、他の人の数字を管理しなくてよくなったことで、ストレスは明らかに軽減されました。このように、階層をなくすことで、チームはより良い形に生まれ変わったのです。

多くの企業は階層に無駄があり、メンバーを管理することがコストになっています。圧力で働かせようとしても、うまくいかないということはずっと前からわかっていました。私たちは目標や階層ではなく、もっと別のものに重きを置いて仕事をすべきです。

その仕事は美しいか

オーストラリア留学センター

では、仕事をする際に重きを置くべきものとはなにか。その答えは「美学」です。

チームで仕事をしていると、いろいろな人がチームのメンバーになります。強い人・弱い人、得意な人・不得意な人、運の良い人・運の良くない人。そして、階層によって比べられ、目標によって管理されていると、妬みや僻みといった人間の嫌な部分が出てきます。

本来だれしも良いときもあるし、うまくいかないこともあるのに、そう思えなくなってきます。それは美学が共有できていないからで、メンバーが同じ方向を見ていないからです。

三田
美学というと抽象的なものではありますが、もう少し具体的にお聞きしてもよろしいでしょうか?

美学とは、美しくあること、あるいは私達であれば「自分たちは正義の味方」だと思えることです。周りがなにをしても自分たちは正しくやる、必ずお客様本位で考える。「それって美しいの?正しいの?かっこいいの?みんなに優しいの?」と自分たちに問いかけるのです。

誘惑にかられることがあっても、美学を守ってみんなのためを考えられることが大切だということです。そうした美学を浸透させるために、毎朝、社員にメールを書いています。2008年に代表になって以来ずっと続けてきて、美学を共有できるチームになりました。

また、このようなチームを作っていく際、採用の時にはジョブ・ディスクリプション、ファンクションありきで考えるべきではありません。

※ジョブ・ディスクリプション・・・職務の内容を詳しく記述した文書のこと。

自社の要件に当てはまる人を採用しようとすると、人ありきではなく、ファンクションありきになってしまいますが、それではうまくいきません。そういった役割や機能ばかりを明確にし、着目する組織は守りに弱くなってしまうからです。

役割が割り当てられていない業務が発生したらだれが対応するのか、イレギュラーの事態が発生したらだれが対処するのか、となってしまいます。

また、文化という言葉もありますが、文化にもいろいろあります。たとえば、弱肉強食・マッチョな文化が、浸透している組織もあります。しかし、それはだれもが働きたい場所でしょうか。ここでもやはり、文化よりも美学に重きを置くべきです。

そして、新しいメンバーを増やす際には役割や機能に合う人ではなく美学を共有できる人を採用する。そうすれば、チームはそれほど間違わなくなると思います。

三田
オーストラリアをはじめ、欧米の職場は、ジョブ・ディスクリプション、ファンクションでチームを作っているイメージがありました。オーストラリアという国で経営していてそのあたりはどうなのでしょうか?

オーストラリアで会社を経営していて感じるのは、オーストラリアの組織はアメリカ的だということです。働き手1人1人の能力が高く、1人1人に責任が明確にあるというイメージでしょうか。仕事の報告をだれに上げるのかということもはっきりしています。

それは各メンバーが自分の果たすべき役割や機能を、しっかりと認識しているということです。それは日本のチーム観とは相容れないものですし、チームとしてのフレキシビリティは日本の組織のほうが高いと思います。

オンライン化で軽減したマインドセットや抵抗感

三田
オンライン化・デジタル化の流れが個人と会社に与える影響についてどうお考えですか?

オーストラリア中に拠点があるので、会社としてはもともとオンライン会議はやっていました。新型コロナの影響でオンライン化が浸透して、より外部とのオンラインでのコミュニケーションが気軽になったと感じます。

「遠くいるから話ができない」というマインドセットがなくなりました。以前なら「日本に帰ったときに会って話そう」と考えていたものが、「今話せばいい」と思えるようになりました。

オーストラリア内のことでも、今まで各支店を回って留学生向けにセミナーを実施しましたが、わざわざ行かなくてもできるということに気づいたのです。待ったり我慢したりする必要がなくなったと思います。

また、オンライン化でお客様側の抵抗感がなくなったとも感じます。具体的には、高校生・大学生の間でZoomでの面談が当たり前になりました。

今まではまずZoomをインストールしてもらうところから始まっていたのが、「じゃあ、一度Zoomで話しましょうか」といえるようになったのです。メールでのコミュニケーションからはじまっていた時と比較して、精度は高まり、スピード感が早まったと感じます。

もう1つ、オンラインでコミュニケーションの場を持つことで全国の高校生が興味をもって集まってくれます。地方にいる真面目に将来を考える高校生が、先生をこえて自分の意思で会いに来てくれる。これはオンラインだからできることです。

直接会うことに比べると、一定のクオリティが下がってしまうかもしれませんが、会える人が増えたということが大きいと思います。

オンライン化によって変わる人の見え方

個人への影響という面で考えると、オンライン化は自立した人にチャンスをもたらすものだと感じます。これからはまず人間的な部分が重要視されるようになるでしょう。たとえば、礼儀正しい人か、約束を守る人か、時間通りにできる人かといったイメージです。

オンラインでは「あいつはああいうキャラだから」といったものが通じません。ノリが良いだけという人からはチャンスが離れていき、しっかりした人にチャンスが生まれるようになるでしょう。

また、社会への影響という面では、今回の新型コロナを経て生き残るのはファンの多い会社だと考えています。オーストラリアでは地域のカフェは生き残り、観光地のカフェは潰れていくという現象が起こっています。

この現象の理由がまさに「ファン」の有無なのです。地域のカフェには多くのファンがいます。そのような客はテイクアウェイになっても利用します。家族のような感覚なのです。一方で観光地のカフェは固定のファンを作ることができません。

そして、ファンを作る仕組みを持っているのは美学を持つチームだといい換えることができると思います。大事にしている美学があって、美学に基づくサービスを提供し続けることで、ファンができていく。

ファンを作れる美学を持つということは、最終的に強いチームの1つの形だと思います。

階層が少ない、フラットで家族的なチームが日本には合っている

三田
チームの未来はどのようになっていくと思いますか?

これからは20人~30人のチームが社内・社外に数多くできていくでしょう。会社・業界・社会と、いろいろなところでチームが生まれていきます。結果として人はチームからチームへと横移動できるようになっていくと思います。

1つのチームでやり切ったことを、別のチームで活かせるようになるのです。そのような環境では、正しい仕事をしている良い人たちに、良いチャンスが回ってくるようになります。良い会社がもっとできてきて、もっと業界が良くなって、社会が良くなっていく。

そういう流れが生まれていくと考えています。

また、チームの理想の形としては、家族的でありながら、階層を少なくするのが良いと思います。弱い人・優しい人は弱肉強食の組織では生き残れません。一方で何もしない人に役職があるのはおかしいという声もあるでしょう。

それならフラットでいいのではないでしょうか。階層がなくなれば妬みや疑問、ストレスが減っていくはずです。そうまでして私たちがチームで働くのは、チームにすることによって弱い人たちも自尊心を傷つけられずに生きていく場所ができるからです。

人間だれしも良いところがあります。嘘をつかないこと、優しいこと。私たちは改めて日本人の本当に良い部分に注目すべきです。家族を見るようにメンバーのことを見るチームがあってもいいでしょう。

そのうえで、だれかが新たにチームに加わるときには、人間的に良い人を選べばいい。そして、目標設定のときに強欲にならない。

そのようにちゃんとやっていれば、今回のような新型コロナのようなピンチが訪れたとしても、チームとして生き残っていけます。多くの会社が苦しいときにでも、美学を守って、お客様第一で仕事ができるのです。

三田
美学を持っているチームの強さを感じますね。このインタビューで最後に聞いているのですが、衛藤さんが今回の新型コロナを通じて得た気づきなどはありますか?最後に教えてください。

オーストラリア政府の支援の考え方かな。

今回の新型コロナで影響を受け、売上が昨対比30%ダウンした企業に勤める社員が対象となる「ジョブキーパー」という支援制度があります。

金額にして月額3000ドル(約23万円)を、2週間に1回のペースで6ヶ月にわたって、企業を通じて国が支給してくれるというものです。そしてこの制度が素晴らしい点は「だれのためのサポートなのか」がはっきり示されていたことです。

ジョブキーパーの制度がスタートするとき、首相が企業に対して「これは企業が悪くなった時に、人を解雇しないようにするための支援です。だから絶対に従業員を解雇しないでください」といっていました。

この言葉から支援が働いている人に向いていることがわかると思います。私はそこがいいと思いました。オーストラリアにいてよかったと。

また話は戻りますが、今回の新型コロナはあらゆる国と地域に大きな影響をもたらしました。日本の企業は今回の大きな変化を期に、近年諸外国に習って取り入れられてきたマッチョなメンタリティをやめてもいいと思います。

昔の日本のような、つまりは家族的なチームに立ち返って、日本らしい良いチームを作っていけばいいのではないでしょうか。

まとめ

「チームの未来」インタビュー第5回目は、オーストラリア留学センター 代表取締役 衛藤氏に話をうかがいました。

階層をなくしてチームをフラットにする、また、美学を共有して同じ方向を向くという明確な意図のもとにチーム作りを実践してきた同社。大事にしている考えや思いのなかには、チームの統一感や一体感を育てていくためのヒントが数多く詰まっていました。

メンバーの管理をやめて、チームをだれもが自尊心を傷つけられずに生きていく家族のような場所にすればいいという衛藤氏。その主張は企業同士・働き手同士が常に競争をする現代において、悩みを抱えるチームに新しい気づきをもたらすものでしょう。

<参考文献>
・オーストラリア留学センター
https://www.gcsgp.com
・オーストラリアを旅する社長のブログ「誰のための支援なのか」
https://etonobuhiko.com/jobkeeper-support.html
・JobKeeper Payment for employers and employees
https://www.business.gov.au/Risk-management/Emergency-management/Coronavirus-information-and-support-for-business/JobKeeper-Payment-for-employers-and-employees

執筆者・編集者紹介

執筆

正社員+業務委託で4社と契約を結ぶパラレルワーカー。様々なチームに所属し、1つの会社に依存しない働き方を体現しています。ライターとして800本以上の記事制作実績があり、得意分野は組織、キャリア、働き方関連。

編集

様々なバックグラウンドがある個人が尊重され続けるチーム作りを目指して、「対話」と真剣に「楽しく遊ぶ」ことをデザインしたチームづくりのためのプログラム「アクティ場 For Team」を提供しています。

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