【チームの未来】人がチームを作って働くことの本質はこれからも変わらない ー 株式会社HEART QUAKE 代表取締役 千葉 順氏

チーム 未来 多様性
これからのチームや働き方のあり方を、様々なフィールドで活躍しているビジネスリーダーに問うインタビューシリーズ「チームの未来」。第3弾は株式会社HEART QUAKE 代表取締役の千葉 順氏に話をうかがいました。

株式会社HEART QUAKEはビジネスゲームというビジネスを疑似体験するゲームを用いて、「参加型・体験型」の学びの場を提供しています。実施する研修やワークショップでは、座学だけでは得られない体験によって、楽しみながら学べる場を作っています。

ビジネスゲームを用いて「楽しく、学びがある研修を提供する」という企業理念を掲げる同社。今回は代表である千葉氏に、これからのチームについて語っていただきました。

  1. すべての会社がコストと工数をおさえて研修を実施できるように
  2. オンライン化で変わる学びの目的と形
  3. 世界観の共有がチームにとってもっと大切になる
  4. チーム内での学習の積み上げへの対処が求められる
  5. 10年後も変わらないチームの本質に注目する
  6. まとめ

<プロフィール>
株式会社HEART QUAKE 代表取締役
千葉 順氏
千葉 順
1982年生まれ、神奈川県川崎市出身。高校時代に人工知能に興味を持ち、成蹊大学 工学部(現:理工学部)に入学。卒業研究は「プログラミングを学ぶe-learningシステムの開発」。2005年、株式会社ワークスアプリケーションズ入社。システムエンジニアとして会計システムの開発に従事。同社を代表する10人の社員に選出される。また、毎年4万人が志望する同社のインターンシップ運営リーダーを歴任。2010年6月同社を退社後、日本一周旅行を経て、2010年10月株式会社HEART QUAKEを設立。2011年4月から2014年3月まで京都精華大学にてキャリアデザイン論の講師を務める。2018年より法政大学にて非常勤講師(キャリアデザイン論)。

株式会社HEART QUAKE:https://heart-quake.com/

すべての会社がコストと工数をおさえて研修を実施できるように

三田
現在の取り組みについて教えてください。

ビジネスゲームという教育研修用のゲームを用いてチームビルディングを中心とした企業研修を行っています。

会社としては10年前に設立し、当初はプログラミングの研修を実施していました。その後、1年~2年経ってからビジネスゲーム関連の事業をスタート。今ではそちらが主軸となっています。

heartquakeのwebsite

ビジネスゲームに似たものとして、チームビルディング用ゲームがありますが、両者は厳密には別物です。

ビジネスゲームのコンテンツはビジネスを擬似体験するものであり、チームビルディング用ゲームはよりレクリエーション寄りになっているとイメージしていただければと思います。

私たちはその両方をクライアントの要望に応じて提供しています。ビジネスゲームとチームビルディング用ゲーム、それぞれ下記が人気のプログラムの一例です。

財務研修のビジネスゲーム「財務の虎」

財務の虎
財務の虎

財務の虎は、貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)などの会計・財務知識を学べるボードゲームです。ゲームを使うことで敬遠されがちな会計・財務に関する知識を楽しみながら学べます。ゲームは2つのレベルで構成され、段々と難易度が上がる設計です。

メンタルヘルス研修のビジネスゲーム「ストマネ」

ストマネ
ストマネ

ストマネはメンタルヘルス対策を学べるシミュレーションゲームです。産業カウンセラーおよび臨床心理士、2名の専門家の監修を受けて開発されました。4名で1つのチームを組み、メンバー同士が助け合うことで、ストレスを軽減しながらプロジェクト完了を目指します。

チームビルディング用コンセンサスゲーム「NASAゲーム」

NASAゲーム
NASAゲーム

NASAゲームはチーム内での合意形成(コンセンサス)の方法を学ぶビジネスゲームです。4名~6名が1チームとなり、不時着した宇宙船に残ったアイテムの中から、生還するために必要なアイテムに優先順位をつけていきます。

多数決や諦めではなく、全員が納得する回答を話し合う過程で、合意形成の難しさやプロセスの重要性に気づけるものとなっています。話し合い終了後、NASAの公式回答と照らし合わせ、最も誤差が少ないチームが優勝となります。

ビジネスゲームを事業として提供する思い

国内でビジネスゲーム事業を展開し、様々なコンテンツをそろえている企業はそれほど多くはないと思います。だいたい10社ほどでしょうか。

近年は自社でプログラムを提供するよりも、代理店さんを通じて提供している企業が増えてきています。たとえば、これまで屋内のコンテンツを提供していた企業が、代理店契約でサービス領域を広げようとしているというようなイメージです。

そのような状況のなかで私たちが独自のビジネスゲームを教育・研修用のゲームとして提供しているのには理由があります。

企業が社員向けの研修を企画・実施する際、大きな会社だと研修担当者がいます。一方で、小さな会社は、人事や総務の担当者が1人ですべてをやっているということが珍しくありません。

新入社員や昇格者に対して良い研修を実施したいけど、資料を全部自分で作る時間はない。あるいは、外部の研修サービス会社にすべてを外注する予算もない。「研修を良いものにしたいけど、自分1人では実現できない」という人事担当社が多くの企業にいるはずです。

私たちが行っているのは、そのような人事担当者・会社に研修のコンテンツだけをレンタルするというサービスです。資料もワークも新たに作る必要はなく、コスト的には丸々外注するよりも控えめです。

クオリティについては多くの会社の導入実績があり、ブラッシュアップされているので、安心できるレベルになっています。コンテンツをレンタルするという形をとることで、工数とコストがかけずに、運営と参加者の双方が満足できる研修が実施できるのです。

人事担当者が練習すれば、自社に合う内容の研修を、自由に自力で実施できるようになることが私たちのサービスの価値だと考えています。

目指しているのは研修の「差」を埋めるサービス

これは私自身も他の方から教わったのですが、研修には3つの「差」あるといわれています。具体的には「企業規模」、「地方」、「世代」という3つの軸です。

たとえば、「大手/中小」では研修頻度や予算に差があります。「東京/地方」では活用できる外部の研修サービス会社の数に差があります。「景気の良いとき/悪いときの世代」では、同じ会社であっても時間やコストの面で、研修の実施状況に差が生まれます。

私たちが提供する低コストでクオリティの高い研修が実施できるレンタルサービスは、これらの差をこえていけるものです。企業内で行われる研修は上記のような様々な影響を受けやすいものですが、レンタルという形をとることでそのリスクを回避できると考えています。

オンライン化で変わる学びの目的と形

三田
オンライン化・デジタル化の流れが個人と会社に与える影響についてどうお考えですか?

各領域で変化が起こりはじめていると思います。それぞれに分けて、お答えします。

個人にとってのオンライン化

個人 オンライン化

まず個人に与える影響という点では、働き方の差がより明確になっていくと思います。デスクワークがどこでも可能になることは多くの人が実感している一方で、すべての仕事が場所を選ばないわけではありません。

モノの生産に関わる工場作業などは、働く場所を選べない職だといえるでしょう。ですので、オンライン化によって個人の働き方は自由になったというよりは、仕事別の自由度の差が大きくなったという印象です。

また、テクノロジーの進化で、必要とされる人間の労働力は今後小さくなります。機械化によってゼロにはならないにしても、あらゆる職が今のまま残っていくとは思えません。結果として、労働の対価がベーシックインカムのような形に近づく想像ができます。

いろいろな工程が自動化され、人間の労働が限りなく0になる社会で、国ではなく企業がベーシックインカムのようなものを提供するようになるかもしれません。

最低限の食事と衣類が配布されるようになれば、私たちは「生きていくために」という理由でお金を稼ぐ必要がなくなるでしょう。

企業にとってのオンライン化

withコロナの考えもあり、恒久的に出社しない・分散出社を行う企業が増えてきています。特に人事系の領域は、オンライン化を避けられないと思います。簡単には元通りにならないでしょうから。

私たちのサービスにとっては、コンテンツへのニーズは変わっていないと感じています。提供の手段が変わってきていて、まさにオンライン化しています。また研修の目的が「学び」から、コミュニケーションの機会としての研修へと変化しています。

「コミュニケーションをとること自体」が、チームにとって目的化してきているということです。ここ最近、業務と関係ない時間で、コミュニケーションをとる機会としての研修を多くの企業やチームが求めるようになりました。

なかには研修よりレクリエーションを探しているという顧客もいますし、研修という名前でも、レクリエーション型・ワークショップ型が人気を集めています。コロナの影響で身体接触のない学びの場が必要とされ、ニーズはオフラインからオンラインへシフトしています。

事業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に対応できる企業・できない企業

オンライン化・デジタル化の流れに伴い、企業はDXへの対応を迫られています。企業にとっても、個人にとってもスキルの差が生まれることは避けられません。そして、特に企業のほうが深刻な問題になるでしょう。

事業展開において、DXに早く対応できれば他社に対する差別化となり、あとで追い付いても差別化にはなりません。企業はいち早くDXに対応すべきです。そのために、企業にはDXを学ぶ機会が必要になります。

もし本当に企業が素早くDXを学ぼうとするなら、新卒などの若年層が持っている知識を企業が受け入れられるかがポイントになるでしょう。それはアンラーニング、つまりは積み上げたものを捨てる意識がなければできません。

既存の考え方にとらわれることなく、ゼロベースからDXを取り入れた仕組みを構築しないとちぐはぐなものになってしまいます。今後は企業内でDXを適切に推進できる人材へのニーズが予想されます。

世界観の共有がチームにとってもっと大切になる

三田
「チーム」という存在の現状とこれからをどのように見ていますか?

まず私たちの現状をお話するとHEART QUAKEは、組織をこえたチームを組んでサービスを運営しています。ビジネスゲームの開発に力を貸してくれるオブザーバーもいますし、コンテンツをオンライン化する際にデザインを依頼するパートナーもいます。

新たな研修やビジネスゲームをリリースする際、サイトデザインは同じテイストにする必要があります。それができるのは、パートナーのデザイナーが社外にいる存在でありながら、私たちの研修コンテンツについて理解してくれているからです。

同じ人とチームを組むことには、コンテクストの共有がしやすいというメリットがあると思います。世界観の共有ができているから、会社という組織の外にいる人でも、チームとして一緒に仕事ができるのです。

世界観の共有とは「目的」や「価値観」の理解を高めていくことです。情報の解釈というレベルではなく、目的の部分まで共有できているかどうかが、ともに仕事をしていくうえで重要なのではないでしょうか。

目的を果たすためにチームは集結と解散を繰り返すようになる

チーム 集結 離散
その上で「共通の目的を実現するために、お互いの強みを活かし合う」というチームの本質の部分は現状もこれからも変わらないと考えています。ただし、オンライン化のことを考えると物理的な距離や所属する組織をこえたチームが増えてくると思います。

また、チームのメンバーとしては、「ITに強い人」、「グローバルに強い人」の増加が予想できます。そういった専門分野を持つ人が、組織をこえてチームに入ってくるようになるでしょう。

たとえば、「うちの会社の人じゃないけど、チームにはITプロフェッショナルがいる」あるいは、「必要に応じてチームにアドバイスをくれるオブザーバーがいる」というようなイメージです。

チームの姿としては、永続的に続く組織というよりは、目的を終われば解散するようなプロジェクト型のチームが現実的になってきています。プロダクトライフサイクルが短くなってくる中で、チームも集結と解散を繰り返すのです。

ある一定の期間を経て目的を果たしたら終わる。それがチームの新しい姿になっていくでしょう。チームを作ってプロジェクトに取り組む目的は変わらない一方で、チームの構成は変わっていくことになります。

チーム内での学習の積み上げへの対処が求められる

三田
つまりチームの未来は、個人だけではなく、組織内でも社外の人が参画するプロジェクト型のチームが増えていくということでしょうか?

そうですね。よりプロジェクト型で、より組織や物理的な距離をこえて、よりデジタルツールを活用するようになると思います。そして、目的ごとにチームの構成が変わり、いろいろな価値観の人が社内外問わずプロジェクトに参加してくるようになるでしょう。

言い換えれば、全てを自社内で完結し、形にしていくのは難しくなっていくかもしれません。そうなると、今よりもっとチームのコミュニケーションや、メンバー同士の対話が大事になってくるはずです。

また、プロジェクト型チーム、つまりは集結と解散を繰り返すチームでの学習の積み上げが課題になると予想されます。プロジェクトごとで集まって解散を繰り返していては、学びは蓄積されません。

そこがこれまで1つの組織内のメンバーだけで構成されていたチームと比較して、足りないものだといえます。これを解決するためには、映画製作の際の「〇〇組」というような形がいいのかもしれません。

学習の積み上げ

製作する作品・起用する役者が変わっても、「この監督の作品には必ずこの役者さん、照明さんがいる」というイメージです。もしくは、このアーティストのツアーにはこのコーラスが必ず参加するというパターンもあります。

要するに、プロジェクトごとにチームを組みなおすとはいえ、チームのメンバーを毎回総入れ替えするのではないということです。組織の壁をこえるといっても、社内の人とチームを組んではいけないというわけでもありません。

チームとしての学習を蓄積させていくなら、ベースは会社の中の人だけど、メンバーのすべてが社内の人ではないチームという構成ほど良いでしょう。使い古された言葉ではありますが、チームにおけるナレッジマネジメントが重要なのです。

10年後も変わらないチームの本質に注目する

アマゾンのジェフ・ベゾスCEOが今年5月の株主総会で10年ビジョンについて質問を受けた際、「今後10年間で多くのことが変化していく。『変わらないものは何か』を自問することのほうが重要」だと答えました。

私もこの「今後10年で変わらないもの」に注目するのは大切だと思います。例えば、「チームの目的」、「チームでの学習」、「チームでの対話」の重要性はこの先10年も変わらないと思います。

新型コロナは、人はだれもが1人では不安で、だれかと関わりたいという思いを抱えていることを証明しました。

私たちのなかには、オンラインで飲み会をしても、人に会って話したいという欲求があり続けました。また、私たちは禁止されなければ満員電車に乗ってでも出社したい(出社しなければならない)という意識を持ち続けています。

チームの本質

私たちが求めているのは、その先にあるのはだれかとの対話の場です。居酒屋でお酒を飲みたいのも、オフィスで仕事をしたいのも、対面で人とコミュニケーションをとりたいという本質的な欲求のあらわれではないでしょうか。

チームで仕事をすることも同じです。10年後も私たちはだれかと関わり、力を合わせながら仕事をしたいという欲求を持ち続けているでしょう。そしてそれは、これからも私たちがチームで仕事をし続けるという未来予想に他なりません。

まとめ

「チームの未来」インタビュー第3回目は、株式会社HEART QUAKE 代表取締役 千葉 順氏に話をうかがいました。
これからのチームはプロジェクト型で、組織の壁をこえてメンバーの集結と解散を繰り返すようになるといいます。一方でプロジェクトごとに構成を変えるチームにとって学習は重要で、どのように蓄積していくかが新しい形のチームの課題になるということでした。そのうえで、「人がチームを作って働くことの本質はこれからも変わらない」という千葉氏の言葉には、強い説得力がありました。

<参考文献>
・財務研修のビジネスゲーム「財務の虎」
https://heart-quake.com/game/zaim_game
・メンタルヘルス研修のビジネスゲーム「ストマネ」
https://heart-quake.com/game/mental_health
・チームビルディング用コンセンサスゲーム「NASAゲーム」
https://heart-quake.com/game/nasa_game
・ジェフ・ベゾス、アマゾン「10年ビジョン」策定の際にいつも考えることは何かを明かす
https://www.businessinsider.jp/post-213710

執筆者・編集者紹介

執筆

正社員+業務委託で4社と契約を結ぶパラレルワーカー。様々なチームに所属し、1つの会社に依存しない働き方を体現しています。ライターとして800本以上の記事制作実績があり、得意分野は組織、キャリア、働き方関連。

編集

様々なバックグラウンドがある個人が尊重され続けるチーム作りを目指して、「対話」と真剣に「楽しく遊ぶ」ことをデザインしたチームづくりのためのプログラム「アクティ場 For Team」を提供しています。

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