自粛から「自学」。今こそeラーニングで学ぶライフスタイルへ

eラーニング
なにかと自宅で過ごす時間が増えている昨今、ゲームばかりしていないだろうか。これまでよりも時間に余裕ができたから今のうちに勉強しておきたいという人も、研修に悩む企業も必見。今まで以上に注目される「eラーニング」についてみてみよう。

<目次>
①eラーニングはインターネット上で学習する行為
②組織でのeラーニング活用例
③個人でのeラーニング活用例
④室内で過ごすうえで意識したいメンタルケア5ティップス
⑤自学のあるライフスタイルへ

eラーニングはインターネット上で学習する行為

エレクトリック・ラーニング

Electric learningの略語である「eラーニング」。インターネット上で学習する行為をさすこの単語は、必ずしも日本では統一されていない。書き方においても「e-ラーニング」「e-Learning」「elearning」「イーラーニング」といった表記がみられるという。また同様の意味を指す言葉として「オンライン学習」といった別称も多い。まず本記事では「eラーニング」と表記を統一することとする(なお、海外でも同様に ‘e-learning’ ‘online learning’ といった具合で統一はみられていない)。

だれもがいつでも新しい教材にアクセス可能

Eラーニングは合理的なツールといえる。そのひとつに、ユーザーである学習者側は常にインターネット上で学習するため教材に更新があった場合でも提供者側はサーバーの教材を書き換えるだけで事足りる。配った資料が古くなったため再配布しなければならない、といった煩わしさや混乱がなくなるというのは学習を効率化するうえでメリットのひとつと言えるだろう。

実際に、米大学などのテキスト教材を出版する英企業Peasonでは、サブスクリプションモデルでの教材販売を推進する動きが強まっている。紙代がかからないことで生徒はより安価で購入できるというメリットがあり、さらに中古品として転売される危険が少ないことから(アカウント管理は重要になるが)このアクションは売上減の懸念点も払拭するという企業側のメリットも含む。

ニーズ高の背景にあるのはライフスタイルの多様化

eラーニングの背景に触れる前に、そもそもわたしたちのライフスタイルは「働き方改革」「フリーランス」といったワークスタイルの変化に伴い、ライフスタイルそのものが画一的ではなくなってきている。誰にとってもその変化は所感として抱いている部分は少なからずあることだろう。

その変化の象徴的なものとして挙げておきたいのは上述にも挙げたサブスクリプションだ。サブスク史上は2023年に市場規模8,600億円になるとの見方もある。NetflixやDisney+といった動画ストリーミングサービスにAdobe CCなどの編集ツール、Spotifyなどの音楽配信サービスに至るまで多岐にわたる。

わたしたちは日常生活においてすでに必要なときに必要なものを利用する、というスタイルが当たり前になりつつある。

時空間に縛られない学習スタイル

国内eラーニング市場規模
その前提を踏まえれば、学習スタイルにも同様の変化が起きてきてもおかしくはあるまい。2019年度の国内eラーニング市場規模は、前年度比4.3%増の2,279億円とされている。B2B/B2Cそれぞれに堅調に伸びが期待されているが、2020年時点においては何といってもCOVID-19である。ソーシャルディスタンスが推奨されオフラインで集うことがよしとされない昨今の自粛ムードこそが、(幸か不幸か)eラーニングにとってのこれまでに無い追い風となっている。

それでは現在において具体的にどのような形での活用が進んでいるのだろうか。提供側/利用側も増えている昨今においてジャンル総てを網羅することは難しいため、今回はあくまでその一部ではあるが国内外のB2B/B2Cにおける事例を幅広くみていきたい。

組織でのeラーニング活用例

企業の新人研修

企業において、これまで大人数が一ヶ所に集まり講義形式で行うものが我々の考える研修であった。しかしながらCOVID-19による影響を受け、大手印刷会社凸版印刷では2020年度の420名への新卒研修をオンラインで行うことを公表している。

“ 教育ラーニングプラットフォームを活用した、在宅オンライン型研修を実施します。従来の集合研修で蓄積したテキストをオンライン上で動画などを用いて学習できるとともに、在宅での研修でありながら、同期社員のネットワーク構築のために、グループごとにトレーナーを配置し、集合研修さながらのコミュニケーションを促進するプログラムを実施。 ”

<出典>
凸版印刷、新入社員研修を在宅オンライン型で実施

チーム内でのスキルアップ

Adobe Captivate

<出典>
E-Learning

Photoshopなどのクリエイティブ編集ツールを提供するアドビは、チーム内での研修ツールなども定額販売している。現在日本語版は2コースのみだが、英語版では11のコースが用意されている。なお同時にアドビ社では、Adobe Captivateというeラーニング作成ソフトツールも提供している。

eラーニングで大学の学位認定も

ufonline
特に海外の大学などでは一部の講義がオンラインで単位取得ができるという動きは珍しくなく、2010年代にはOnline College / Universityというカテゴリで入学〜卒業までオンラインでの対応が可能な教育機関もこれまで以上に増えた。キャンパスに通う従来の通学に比べ安価で自由なスケジュールでの学習・単位取得が可能なことから、ニーズが高まっている。

また上述の新人研修同様COVID-19の影響を受け、国際基督教大学では2020年度春学期(4月初旬~6月下旬)の一定期間、原則として全授業でオンライン授業を導入するなどの特例措置を取ることを発表している。

個人でのeラーニング活用例

専門スキルを身につける

blossomlink

<出典>
WEEKEND CREATOR CLUB

■ 動画・編集スキル
真っ先にeラーニングで思いつくものはプログラミングをはじめとしたインターネット上での専門スキル。国内でもプログラミングでも数多企業がしのぎを削っているが、最近ではクリエイターが直接コミュニティ型でレクチャを行うサービスもある。サンフランシスコ在住のコンテンツクリエイター大石結花さんが運営しているコミュニティ「#週末クリエイター」では、有料コミュニティ参加のメンバー向けに毎回テーマに沿ってノウハウのレクチャを行っている。

語学スキルを身につける

progrit

<出典>
プログリット公式サイト

■ オンライン指導で短期間で圧倒的な成長
自動翻訳の技術がすすむ昨今においても未だ需要が高い語学学習。ITスキル同様に変わらぬニーズと人気がある。実際にネイティブとの会話をする英会話サービスはもちろん、昨今は目的別に合わせたオリジナルのオンライン学習でより効率の良い英語学習サービスを提供する企業も多い。駅前留学が面倒に感じるほど、フレキシブルに学習ができて短期間で効果があるのなら、活用すべきビジネスマンは多いことだろう。

キャリアアップを目指す

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■ オンラインMBAはキャリアストップ不要
キャリアップが目的、という点において英語学習とモチベーションは同じだが、ビジネスマンにとってMBAは魅力だ。特にキャリアを一時停止することなく取得することができる点でeラーニングは格好のスタイルともいえる。Warwick Business Schoolが展開するDistance leaning MBA(=遠距離学習MBA)はFinancial Timesで3年連続1位に輝く。
(※入学はUK国内に限られている)

<出典>
Online MBA Ranking 2020

theartofeducation

<出典>
The art of education UNIVERSITY

■ 美術教師としてのキャリアアップ
「素晴らしい美術教師を育てる」ことをミッションにThe Art of Education Universityが提供するのは、幼稚園〜高等学校までの美術教師のためのeラーニング講座。◯◯教師に特化したeラーニングというのはまだ日本では珍しいが、the Distance Education Accrediting Commission (DEAC)からの認定もあり、ここでの単位取得は以後の美術教師キャリアで大いに活用することができる。

まさに今学びたい分野を深掘り

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<出典>
MBRU

■ ドバイの医科大学でCOVID-19対策を学ぶ
Mohammed Bin Rashid University of Medicine and Health Sciencesが提供するオンラインコースではさっそくCOVID-19に関するプログラムが用意されている。同ウイルスに関する知識と意識を高めるための約1時間の無料コース。課題や認定も出ることから、これを受講することによりウイルスに関する一般的な知識はもちろん感染拡大に関する情報なども学ぶことができる。

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■ Yale大学史上もっとも人気の講義「幸せの科学」
Yale大学史上もっとも人気があるとされる講義「The Science of Well-Being(幸せの科学)」。2018年以降のべ110万人近くが受講している。その大人気授業は、コロナウイルスが世界中で猛威を振るうに従い、受講者数は単月で63万人にも膨れ上がった。不確かな状況下でこれまで以上に「幸せ」について考えたいと考える人が世界中で増えたことの表れといえよう。その状況を受け、Yale大学はCourseraにて無料で講義のオンライン配信を開始。希望があれば課題とともに履修も可能だ(有料)。

室内で過ごすうえで意識したいメンタルケア5ティップス

最後にメンタルケアについても触れておきたい。時間が増えた一方で、室内のみで過ごさなければいけないライフスタイルというのはついつい気が滅入ってしまいがちである。気持ちがネガティブなままでは積極的に学ぶ姿勢すらも失ってしまうだろう。eラーニング提供側としても、対象者のメンタルがこのような点を注意することが肝だと鑑みておくに損はない。

以下アドバイスは、故ダイアナ妃の友人でもあり英国王室ジョージ王子のゴットペアレントでもあるセラピストのジュリア・サミュエルによる。彼女は実際にNHS(National Health Service)で家族や大切な人を失った人の心に寄り添うメンタルケアを30年以上務めてきたプロフェッショナルでもある。

■ 短期間でのプランを守る
今日限りのプランでも数日のプランでも構いません。気が滅入ることを避けるためにも、必要以上に、先の読めない不確かな未来を見てしまわないことがポイント。

■ 運動をする
たとえ7分だけの室内運動でもメンタルへの効果あり。キッチンで踊るも気分が上げることが可能に。

■ 呼吸を整える
軽い運動のあと5分だけでも呼吸に意識を集中させることもメンタルにとっては重要となる。

■ 労わる
意図的に自分を労わるように。でも浴びるようなお酒は推奨しない。

■ 人とつながる
ソーシャルディスタンス(人と距離をとって接すること)が大前提に推奨される昨今において、直接会うことはそもそも適切ではない。そのためここでもオンラインを活用すべし。日本でも徐々に「オンライン飲み会」を楽しむ層が若者以外にも徐々に広がってきている予兆がある。

自学のあるライフスタイルへ

古来より「病は気から」という言葉はあるが、昨今はむしろ「元気も気から」というべき未曾有の状況というべきか。どのような立場であれ不確かな未来に不安になることもあるが、イレギュラーなライフスタイルにおいてもいつも以上に日常を送ることに意識を向け、自らのスキルを高めていくことに注力したい。
eラーニングでの自学というのは、望むライフスタイルを叶える一助として今後、ますます強い味方になっていくだろう。

<参考リンク>

・Pearson shifts to Netflix-style subscription model for textbooks

・eラーニング市場に関する調査を実施(2019年)

・2023年には8,600億円市場へ サブスク市場はさらに発展する見込み

・凸版印刷、新入社員研修を在宅オンライン型で実施

・Accredited Online Colleges

・Coursera enrols governments in online learning

・「MOOC」だけじゃない、単位・学位が取得できる米大学のオンライン講義

・JMOOC(ジェイムーク)

・国際基督教大学、2020年度春学期の全授業を原則オンラインに

・’Hop At Home’ activity book offers creative fun for kids at home

・Warwick’s online MBA leads FT ranking for third consecutive year

・The Science of Well-Being / Coursera

・The credentials challenge for online learning

・Therapist Julia Samuel on how to manage anxiety and grief during coronavirus